2021年10月8日(金)、アーバンデザイン・スマートシティスクール第3回講義(兼アーバンデザイン研究会Vol.19)『アーバンテラスをつくる歴史編』がzoomにて開催(同時にYouTubeにも配信)されました。
今回は松山の各エリアにまつわる歴史について講師の方々に講義やクロストークをしていただきました。
はじめに、松本啓治氏(坂の上の雲ミュージアム総館長)の『松山のまちなかの成り立ち』と題した講義です。現在の松山ができる背景には、江戸時代に松山城の城下町として栄えていたこと、明治時代に商業が発展したこと、松山大空襲を経て、また戦後復興を通して現在の松山の基盤ができたということを、その時代の土地利用図や貴重な写真を用いてご紹介いただきました。また、これからの活動にそのまま活かせそうな、まちなかにある過去の商店の名残があるビルや、松山に点在する“たぬき伝説”に関する小話等も教えていただきました。
続いて、胡光氏(愛媛大学法文学部教授)に『聖地 道後の歴史』と題して、道後の歴史をご紹介いただきました。 多くの方が持っているであろう「道後=温泉街」といったイメージから一転、「道後=聖地」という衝撃のお話でした。まず、道後温泉自体は奈良時代から古代の書物にも記載されているほど古い温泉ですが、現在のように観光地化する前は、また違った様子のまちだったというお話です。夏目漱石が『坊ちゃん』を書いた時代、温泉の近くに遊郭があり、主人公の坊ちゃんも遊郭の入口にあるお店で団子を食べたと書かれています。昔のお遍路さんの日記には、札所である石手寺にお参りするだけでなく、道後温泉に入って身体を癒し、近くのお店でもぐさをお土産に帰っていたという話が必ずと言っていいほど書かれているそうです。なにより、かつての人々は温泉が目的ではなく、宝厳寺・伊佐爾波神社へのお参りが目的で道後に来ていたという驚きのお話もありました。他にも湯築城や裏山経塚、石手寺には多くの指定文化財があるという温泉以外の聖地・道後の魅力をご紹介いただきました。そして「歴史はいい面だけではなく、悪い面もある、そういった点を踏まえてどのように変遷してきたのかということを正しく伝えて継承していく必要がある」といった今後の活動に大切な心構えをレクチャーしていただきました。
最後は、現在検討が進んでいる道後の上人坂について、三谷卓摩氏(UDCMディレクター)が聞き手となり、クロストークをおこないました。3名のトークゲストをお招きし、力村真由氏(多摩美術大学副手/UDCMプロジェクトディレクター)からは、現在設計中の「坂下広場」の設計概要等について話題提供いただき、奥村敏仁氏(大和屋本店)からは地元の事業者目線での多彩なコメントを、また、小林里瑳氏(東京大学大学院博士課程)からは、道後の回遊行動についての分析結果をご発表いただきました。『上人坂の空間再生と効果の見える化』をテーマに、観光客に道後を回遊してもらうために歴史ある上人坂をどうデザインしていくのか、観光客が楽しめるような坂のつくりやプログラムの実施、地域住民と協働した活用方法等についてトークが進み、実現する場合にどういった点に注意が必要なのかといった具体的な話にも発展しました。最前線の話ばかりで道後の今後についてのイメージが膨らむ時間でした。
今回の講義を受け、各グループは活動プランをブラッシュアップしていきます。寒い日が増えてきましたが、今回の講義を受けて自分も松山の歴史の1ページに携わることができてしまうのではないかと興奮して内心は熱くなっています。体調には気をつけて頑張っていきましょう!(TA桂川)