2022年3月30日に伊予鉄グループ本社ビルにて『松山の新たな駅まちづくりシンポジウム』を開催しました。交通やまちづくりのさまざまな分野で活躍されている専門家を迎え、基調講演をはじめ、事例紹介やディスカッションによって市民の皆さんと松山の新しい駅まちづくりについて考える場となりました。
開会挨拶 羽藤 英二(UDCM センター長)
はじめに、羽藤氏による開会挨拶では、松山という都市の進展に関わるイノベーション、交通ネットワークが時代の変わり目を迎える中、本シンポジウムが「全員が意識を合わせ、さまざまな意見に耳を傾け、未来の松山について議論する場になることを切望する」という思いが語られました。
基調講演『バスタプロジェクトの取り組み』 手塚 寛之(国土交通省道路局企画課 評価室長)
つぎに、手塚氏による基調講演では、みち・えき・まちが一体となった新たな空間の創出について、バスタ新宿をはじめ各地域の事例が説明されました。PPP/PFIの有効性がバスタの官民連携の要件である点について述べ、「松山のバスタの検討が今日をきっかけに加速度的に進むよう国としても取り組んでいきたい」という言葉で締めくくられました。
事例報告『三重県のバスタ構想』 水野 宏治(三重県県土整備部 部長)
つづいて、水野氏による事例報告『三重県のバスタ構想』では、三重県と災害の関係性からバスタの必要性について、バスタ四日市の空間整備、津駅の道路空間の整備方針について熱意ある説明がおこなわれました。
事例報告『松山市のまちづくり』 石井 朋紀(松山市都市整備部 推進官)
石井氏による事例報告『松山市のまちづくり』では、道後温泉駅周辺、古町駅、大街道一番町口、花園町通りの交通まちづくりの事例を整備前後で比較しながら、これまでのまちづくりの経緯について紹介されました。また、現在、進行中である松山市駅前、JR松山駅前の空間改変事業についても紹介され、結節点としての機能と市民の公共交通の利便性を高めることを目指していきたいという思いが語られました。
パネルディスカッション
パネリスト:
羽藤 英二 東京大学大学院 教授
手塚 寛之 国土交通省道路局企画課 評価室長
竹中 由紀夫 愛媛県バス協会 理事
小野 悠 豊橋技術科学大学 准教授
中川 逸朗 愛媛県土木部 道路都市局長
石井 朋紀 松山市都市整備部 推進官
西牧 世博 JR四国 代表取締役社長(ビデオレター)
羽藤氏、手塚氏、竹中氏、小野氏、中川氏、石井氏の6名によるパネルディスカッションが、羽藤氏をコーディネーターとしておこなわれました。
パネルディスカッションに先立ち、西牧氏からのビデオレターが紹介され、ビデオ内ではJR四国の松山駅付近高架化事業、駅まちづくりの開発についての説明がありました。
パネルディスカッションでは、まずJR松山駅の課題についての議論がおこなわれました。小野氏からは「まちとの距離感が視覚的、心理的にあると感じる点が問題点である」との指摘がありました。また、交通機能を超える価値が現状ないことが問題との意見が出されました。手塚氏からは「交通の課題ははっきり見えているため、そこをクリアしたうえで、景観的なものを並行して考える必要もある」といった意見が出されました。
つぎに、駅まちに何が求められているのかをテーマに議論がおこなわれました。竹中氏からは「必要なものは事前に準備する、カーボンニュートラル等への配慮など、将来的な環境面の設計・施工が駅には必要である」といった意見が出されました。中川氏からは「専門家の議論のみにとどまらず、市民や事業者を巻き込んだ取り組みやアーバニストが魅力的な都市を創ることを考え、市民に伝わるような提案が必要である」との意見が出されました。
また、まちづくりに若い人が参加できる環境についての議論には、石井氏から「例えば、外国料理を食べたいならJR松山駅前で」といったような広場としてのイメージ創出の具体的な一例など、個性ある面白い駅まちづくりについての意見が飛び出しました。
さいごに、羽藤氏は「我々の文明が変化し、社会が押し流される中で新しい人とのつながり・地域の選択が、松山のバスタがスタートするために必要である」と述べ、「駅まちが様々な世代のバリアをなくし、徹底した機能美を目指していくことで、今までにない駅まちを創っていくんだ」「この松山市駅前とJR松山駅前で同時に創っていくんだ」という強いメッセージをもってパネルディスカッションが締めくくられました。
閉会挨拶 野志 克仁(松山市 市長)
野志氏による閉会挨拶では「乗り継ぎの利便性だけでなく、待ち合い空間、賑わいの空間等、バスタ新宿のような人中心の空間が必要であり、単独の機能ではなく、一体的な整備が必要である」と述べられ、松山でバスタプロジェクトを実現したいという熱い宣言をもって、シンポジウムが閉会しました。
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