2022年9月1日(木)アーバンデザイン・スマートシティスクール松山2022 第1回全体トークがZoomにて開催されました。
今回は、8月26日(金)におこなわれた第1回レクチャー「八戸市美術館」について、羽藤英二UDCMセンター長と受講生で感想共有したのち、本スクールの活動グループである「歴史班」、「地域デザイン班」、「モビリティ班」にそれぞれ分かれ、今後の活動方針や内容などを話し合うグループワークがおこなわれました。
まず、第1回レクチャーの感想共有の中で、歴史班の受講生からは、「現実とネットの世界のお話から、両者は隔たりのあるものではなくて、それぞれいいところがあってつながっていると感じた。」という声が上がり、これに対し、羽藤センター長からは、「ネットから松山の歴史にアクセスして、訪れた時にもう一度見るといったような、重層的な地域の歴史への触れ方というのがあると思う。文章から情報を得ることや実際に人から歴史の話を聞くこと、作品から歴史を知ることなど、いろいろな情報の流れがあるし、それらの情報をSNSに上げていくことで、またそこから話が弾むなどの流れもある。このような点をふまえて、歴史の表現やアーカイブの仕方を練ってみるのも面白いのではないか。」というコメントがありました。
地域デザイン班の受講生からは、「美術館の展示作品というと難しい印象だったが、八戸市美術館の祭りや柄毛布などをテーマにした展示のお話を聞き、身近なものでも芸術になりうると知り、面白いと感じた。」という感想共有があり、羽藤センター長からは、「普段歴史に興味がない人の意識の俎上に載せるためには、違うもの同士を掛け合わせることで、そこに歴史が入り込んでくるということがある。異なるものを組み合わせた表現など、地域デザインの切り口を班の中で議論できたら良い。」というコメントがありました。
モビリティ班の受講生からは、「展示のあり方について、ホスト側も楽しめるような、住んでいる人の見方を変えてしまうようなという考え方に共感した。生きた展示にするためには、地域に住んでいる人の介入が必要というお話から、地域の人の関心をそそるような展示ツアーを考えていきたい。」という意気込みが伝えられ、羽藤センター長からは、「楽しそうに話す姿を見ると、行かざるを得ない気持ちになる。モビリティで訪れた敷地に関する語りを集めるということも面白いと思う。八戸市美術館では、作り手や市民などの仕分けをあまりせず、美術館という一つの空間で混ざり合うように仕立てられている。制作プロセスや終わった後の片付けそのものを見せる面白さもあるので、それらを作品にしていくような考え方もあるのではないか。」というコメントがありました。また、ニューヨークのグッゲンハイム美術館でのパフォーマンス(参加者に対し、さまざまな年齢層の演者が館内で『What is progress?(あなたにとって進歩とは?)』と問うもの)を取り上げながら、「ツアーの中に松山に対する共通の問いを入れることで、松山に対する理解が深まるといったこともあるのではないか」というご提案をいただきました。
さらに、羽藤センター長は、コロナ前後で人の動き方が変わってきていることを指摘し、その上で、「未来がどうなるのかということは、交通シミュレーションを使うと見えてくると思うので、歴史や地域デザインの展示をつなげ、評価するだけではなく、モビリティ班が計算・分析したものを展示し、未来予想図として見せていくという考え方もあるのではないか。」とお話しいただき、モビリティ班の展示にも期待を寄せていました。
感想共有後、今後の活動について、各班に分かれて議論をおこなったのち、議論の結果について、班の代表者が全体に向けて発表する時間がとられました。
まず、モビリティ班からは、「川をテーマに考えていくと面白いのではないか、また、そこでの交通手段として自転車をうまく活用できないか」などの意見が出たと発表がありました。他の班の受講生からは、川がもつ隔たりや高低差など移動時の制約についての感想や、ハンディキャップを持つ人の交通手段あり方などについて意見が出されました。羽藤センター長からは、「川に橋を架けることで地域とのつながり方が大きく変化するので、川と移動に着目しながら、橋の歴史を深掘りするなどの少し違った視点を持つことや、さまざまな利用者の目線で移動を体験してみることは興味深い」というコメントがありました。
次に、地域デザイン班からは、地域資源として注目していきたいものとして、「地域の風景やそれらにまつわるエピソード、郷土料理や特産品を取り上げ、今後リサーチを進めていきたい」と発表がありました。他の班の受講生からは、地域の風景の中でも何に着目していくのかという質問が上がり、これに対して、今後議論していくことになるとした上で、現時点では自然風景の意見が上がっていると答えました。羽藤センター長からは、今SNSに切り取られているところではないような、あまり知られていないところを発見していくことが良いのではないかというコメントがありました。
最後に、歴史班からは、展示テーマとして、「街路の変遷や戦災復興時の区画整理といった都市形成や、松山でおこなわれている『ちょうちん行列』のルートや掛け声などについて、地区ごとの歴史を整理するといったアイデア」が出たとし、さらに、展示手法として、「模型への投影や祭りの音、ちょうちんの灯りなどを用いる」などの意見が出たと発表がありました。他の班の受講生からは、音や灯りでちょうちん行列の追体験を演出することで、参加者の想像力をかき立てるような提案が興味深いという声が上がりました。羽藤センター長からは、ちょうちん行列のルートや立ち寄り場所をたどると、祭りの瞬間に浮かび上がる旧村の単位や長屋門を持つ旧庄屋などから地区の歴史が掘り起こされていくのではないかといったコメントがありました。
今後は、各班で議論した内容をさらに深掘りしながら、それぞれ展示や分析に向けて具体的なリサーチを進めていきます。これから忙しい日々になりますが、おいしい秋の味覚を楽しみながら、元気に乗り越えていきましょう!(TA中出)