2022年9月8日(木) 午後6時から、アーバンデザイン・スマートシティスクール松山2022 第4回レクチャーがZoomにて開催されました。またその様子は、アーバンデザイン研究会としてYouTubeにてライブ配信されました。
今回は、「スマートシティ」をメインテーマに、清水建設とNECから2名のゲスト講師をお招きし、ご講義いただきました。
はじめに、UDCM三谷卓摩ディレクターから、松山アーバンデザインセンターが参画している「松山スマートシティプロジェクト」について説明がありました。国土交通省のスマートシティモデルプロジェクトとして支援を受けており、都市データを活用した「データ駆動型都市プランニング」を確立することで、松山市が取り組む「笑顔あふれる歩いて暮らせるまち」の実現を目指しているとのお話がありました。人流や車両、建物、道路などの情報をサイバー空間に取り込んだシミュレーションを行っており、公・民・学の協働の基にスマートシティ構想がなされている点が印象的でした。さらに、時刻表や交通結節点などのデータを活用したシミュレーションによって、アクティビティとモビリティの検証・評価が行われ、将来の予測が可能になるとの説明がありました。
つづいて、大村珠太郎氏(清水建設)から、「デュアルモード・ソサイエティにおける交通防災まちづくり」として、豊洲スマートシティの先進的な取り組みについてご紹介いただきました。まず、清水建設は「次世代のまちを共創する」ことを目指し、豊洲スマートシティの開発に取り組んでいるとご説明いただき、歴史や対象エリア、推進体制の詳細と「ミチノテラス豊洲」におけるプロジェクトの概要とそれが果たす機能についてお話いただきました。道の駅が果たす機能は休憩所や地域活性化が挙げられますが、それに加え、複数のモビリティが混在する交通結節点の場、安心・安全の防災機能の実現を図った整備と施設の運用方法のお話が印象に残りました。また、建物OSを介してさまざまなデバイスが繋がるような建物づくりを目指す「DX-Core」を開発したり、都市OSを用いて3D化したシミュレーションを行ったりすることで、まちにとって最適なサービスを提供しているとのご説明をいただきました。豊洲のまちづくりのためには、豊洲スマートシティ推進協議会の取り組みによるポータルサイトやスポットラリー、「ミチノテラス豊洲まちびらき」によるマルシェの運営等によって地域の連携を維持し、今後のまちづくりに必要となるデータを社会実証によって分析することが重要であると述べられました。
つぎに、谷口暢夫氏(NEC)から、「まちづくりとDX」として、松山をはじめとする現場でのデータ取得・収集の実践についてご講義いただきました。少子高齢化やCOVID-19などの社会的側面から、まちづくりは段階的にブランド価値が増加しているとのご説明のあと、課題の多様化によって合意形成が難しく、まちづくりに終わりがない現状についてお話いただきました。そこには、サプライチェーンの変遷の中で、IT効率化による新しいデータの価値創出として、リアルな人とモノへのデータのフィードバックとその背景にある技術的進展についてご説明をいただきました。技術の具体的な活用については、新横浜花火大会で実証実験がされており、カメラとWi-Fiセンシングの同時計測を利用したゾーニングによって、3つの駅の混雑、人流、滞在時間を計測・推計した例が印象的でした。そのほか、松山市駅前広場等でも実証実験が行われており、複数のデータを組み合わせることによって高精度なデータを生み出すことの可能性についてご説明いただきました。これらの実証実験を通して、そもそもデータ流通の推進以前にデータが乏しい現状が浮かびあがり、加えて現実を踏まえないトップダウン型のアプローチや戦略としてのメトリック(計測指標)やビジョンの欠如等の課題についてもお話いただきました。これらの課題を踏まえ、未来を考えるうえでのボトムアップやビジョンと戦略の策定、人材面の改善を通して、楽しむことで未来を考える必要性について述べられました。
レクチャー後は、各班に分かれてグループワークを行いました。今回のレクチャーを参考に、各班がそれぞれのテーマに沿って活発な議論を行っていました。
今回のレクチャーでは、松山の取り組みだけでなく、他地域の先進的な取り組みの事例を知る貴重な時間となりました。今後、各班が本腰を入れて活動に取り組んでいくことになります。心配事やわからないことが増えていくと思いますが、みんなで支え合ってより良い活動にしていきましょう!(TA松尾)
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