2022年9月3日(土)午前10時から、 アーバンデザイン・スマートシティスクール松山2022 第2回レクチャーがZoomにて開催されました。またその様子は、アーバンデザイン研究会としてYouTubeにてライブ配信されました。
今回は、「地域デザインの実践と理論」をメインテーマに、4名の講師の方々をお招きし、ご講演いただきました。
はじめに、青柳菜摘氏(美術作家)から、作品のコンセプトや道後クリエイティブステイ時の活動内容についてご紹介いただきました。その中で、作品を制作する際に「目に見えないものをどう記録するか」を考えて作品を制作しているというお話があり、気軽に撮影ができる時代であるがゆえに、自分が見ている景色を一枚の写真や動画にすべて捉えられると勘違いしがちであるというお話が印象に残りました。また、こうした考えの下、時間の経過や見慣れてしまったものなど、今まで見えなかったことに気付くことができるか、見つけた際にどう探しに行けるかを作品制作の際に考えているという、作品への思いをご説明いただきました。道後のクリエイティブステイでは、「ネットで配信して積み重なるものと実際に自分で書いたものというオンラインとオフラインのものを積み重ねていくということをしてきた」とご説明していただき、個人の記録でも配信をすることで場所として社会で共有される面白さについてのお話も印象に残りました。
次に、伊藤香織氏(東京理科大学教授/UDCMプロジェクトディレクター)からは、グッドデザイン賞受賞作品にみる「地域デザイン」について、そして地域芸術祭について、ご紹介いただきました。グッドデザイン賞については、2020年と2021年に選出された空間や地域で行われている取り組みのデザインを例に、様々な立場や地域の特性を生かした「地域デザイン」についてお話しいただきました。その中で、内向的になりやすい地域デザインを地域外の人の視点を入れることで、捉え方に変化がうまれるというお話が印象に残りました。また、地域芸術祭の事例を踏まえて、定義付けの難しい地域アートが持つ地域の魅力を発信する可能性の高さについても、お話しいただきました。
つづいて、川口真沙美氏(日本デザイン振興会)からは、何がデザインミュージアムに必要かについて、ご自身の考えをお話しいただきました。デザインには、地域資源や歴史文化を共有することによって地域らしさの共通理解をする“アーカイブ”と、見出した地域らしさを継承していく“プロモーション”の2つに分けることができるとご説明いただきました。また、グッドデザイン賞が担う役割や仕組み・理念やデザインの領域の広さについてもご説明をいただき、その中で、審査の視点ではその時代で良いとされているものをもとに評価していること、それらを時系列に並べて日本のデザインとして共有することで生活文化との関係性なども併せて考えることができるというお話が印象に残りました。デザインプロモーションの変化によりデザイナーではない人のデザインに対するかかわり方や自分の興味関心のある分野をキャッチする仕組みなど、デザインを通して身の回りの社会の課題について考えることができるとお話いただきました。
最後に、増橋佳菜氏(東京大学大学院修士1年)から、2022年3月に実施したミュージアムツアー「江東区防災ミュージアム」についてご紹介いただきました。このツアーは、異なるコンセプトを持った3つのミュージアムをツアーとして回ること自体が模擬避難体験になっており、各ミュージアムの展示では、過去の被害から実際の被害想定などを視覚だけでなく、体感してもらうことで防災について考えていただくきっかけになっている点と、抽象的な表現をすることで、来客者のイメージがわきやすいと考えたという点が、印象に残りました。
今回のレクチャーでは、「地域デザイン」の可能性の広さや、空間と時間をとらえた表現方法などを学ぶことができ、地域デザインミュージアムへの期待が膨らむ大変貴重な機会となりました。また、自由度が高いため、迷うこともあるかもしれませんが、自分たちでキーワードをつなげていくことなどを意識して活動を進め、このスクールを通して、実践のプロセスや達成感などを、受講生の皆さんと一緒に感じていきたいなと思います。(TA谷)
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